当該研究は、対数的エタール・コホモロジー論の基礎づけと応用とを目的としていたが、基礎づけ、応用の両面において以下のような成果を得た。 1.基礎づけ面 (1)full log etale siteについての基礎的命題系列(例えば、クンマーlog etale siteとの関係)の証明 (2)full log etale siteについての構成可能性の新しい定義の提出 構成可能性の定義の問題とは、有限性定理が成り立つような適度に小さいクラスを定義するということであり、今まで定義が選出される毎に反例がみつかってきたが今回の定義はまだ反例は与えられていない。この定義での有限性定理を証明することが今後の課題であるが、すでに肯定的結果も一部得られている. (3)fineでない対数的概型に対する対数的エタール・コホモロジーの定義の正当化 (4)(クンマーlog etale siteでの)対数的エタール・コホモロジー論の諸結果をまとめた基本的論文“Logarithmic etale cohomology" 2.応用面 (1)1.(3)他を用いて、対数的スムーズ族の隣接輪体関係の諸結果を拡充、特に半安定還元族の隣接輪体は、その第一無限小近傍で決まることを証明した。(“Nearby cycles for log smooth families") (2)(1)の応用として得られていたweightスペクトル系列の退化についての結果をまとめた(preprint) (3)(T.Kajiwaraと共同)固有トーリック多様体のコホモロジーのweightについて調べweightがつねに純になる次数・次元の必要十分条件を得た。その結果は、一般の対数的スムーズ族ではweightが複雑にまざることを示唆するものであり、weightフィルトレーションの定義が困難であることをも示すものであった。
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