研究概要 |
まず,本年度の研究で以下の相対的ボゴモロフ不等式と呼ばれる結果を得た.f:X→Yを準射影多様体の間の射影的な射で,その生成ファイバーは,幾何学的に既約で非特異な曲線とする.Eを階級がγのX上のベクトル束とする.この時,2γc_2(E)-(γ-1)c_1(E)^2はY上の余次元が2のサイクルであるので,f_*(2γc_2(E)-(γ-1)c_1(E)^2)はY上の因子になる.この因子をdis_<X/Y>(E)で表し,Eのf:X→Yに関する判別因子と呼ぶことにする.さてここで,UをYのザリスキ開集合で,Uの任意の点yについて,f^<-1>(y)は非特異で,Eはf^<-1>(y)上で半安定と仮定する.この時,もしYが非特異なら,dis_<X/Y>(E)がU上pseudo-ample,つまり,AをY上の任意のampleなQ-因子とする時,ある正の整数nが存在して,n(dis_<X/Y>(E)+A)は通常の因子になり, H^0(Y,Ο_Y(n(dis_<X/Y>(E)+A)))【cross product】Ο_Y→Ο_Y(n(dis_<X/Y>(E)+A)) は,U上全射である.この不等式の応用として,以下のことを示せた.gを2以上の整数とし,M_gで種数がgの非特異曲線のモジュライ空間を,M^^-_gで算術種類がgの安定曲線のモジュライ空間を表すことにする.λをホッジクラス,δ_0,δ_1,...,δ_<[g/2]>を境界クラスとする.この時, (8g+4)λ-gδ_0-Σ^^<[g/2]>__<i=1>4i(g-i)δ_i がM_g上pseudo-ampleである.さらに,このことを用いて,関数体上の効果的なボゴモロフ予想がかなりの広いカテゴリーで示せた.
|