研究概要 |
Xをn次元の非特異複素射影代数多様体とし、Eを、n-r(【greater than or equal】1)次元のXのある部分多様体Z上で消滅するような大域切断を有する階数r(【greater than or equal】2)のX上の豊富なベクトル束とする。rが1であれば、これは、与えられた多様体Zを豊富な因子として含むことのできるXの構造を決定するという、豊富な因子による多様体の分類という意味から、偏極多様体の分類に関して極めて重要な位置を占める問題の仮定と全く一致している。この研究の目的は、Zが特殊な多様体のときの(X,E)を分類し、Eが豊富な直線束の場合に知られてい 本年度においては、イタリアのミラノ大学のAntonio Lanteriと共同で、Zが楕円曲線の場合を扱った。まず、Zの標準直線束が、Eの行列式直線束det Eに付随したアジョイント束Kx+det E(KxはXの標準直線束)のZ上への制限として得られることに目をつけ、この場合にはKx+det Eが豊富にならないことを導いた。次に、Kx+det Eが豊富にならないような(X,E)の構造を調べることによって、Zが楕円曲線となるようなn次元特異射影代数多様体X上の階数n-1の豊富なベクトル束Eを分類することに成功し、Eが豊富な直線束の場合の結果を一般次元へ完全に拡張した。しかも、これは、1991年に3次元多様体上の階数2の豊富なベクトル束に限って考察したBallicoの不完全な結果を修正したものにもなっている。
|