研究概要 |
90年代に入り、結び目等をはじめとする低次元多様体間のgeneric写像のトポロジーと特異点に関する研究が再燃している.そこで本件において、閉曲面M^2からEuclid平面R^2へのC^∞安定写像の大域的位相型に関する研究を行った.特に、V.A.Vassilievによる結び目不変量、V.I.Arnoldによる平面曲線不変量の構成方法を基に、安定写像f:M→R^2のisotopy同値類に対する「次数1のVassiliev型不変量」の構成を行った.即ち、A-有限確定多重写像芽R^2,S→R^2,0の分類(A-codim.=3,4)を行い、分類結果と分岐図式の解析から得られるVassiliev複体のhomologyを計算し、非自明な興味深いisotopy不変量を導くことができた.この新しい不変量は、特異値集合(輪郭線)D(f)をplane wave frontとみなすとき、ArnoldのJ^+-理論に深く関連するものと考えられる.しかし、現時点でまだ不明な点が多く、これらを解明する事がこれからの課題である.また、閉曲面MからR^4へのgeneric immerson、2次元結び目やその射影等に関するVassiliev型不変量を見つけること等も今後の問題として考えられ、低次元トポロジーの研究者と情報交換を進めている状況である.上記結果の一部は、平成9年1月に開催された京大数理解研・研究集会「実特異点のトポロジーと周辺話題(代表:佐伯修氏(広島大))」において発表した.数理研講究録に本研究に関する解説を載せる予定である(さらに数編の論文を準備中).この他にも、有限型複素解析的写像f:M→Nのdegenerate locus S(f)のホモロジー特性類(Chern-Schwartz-MacPerson class、Chern-Mather classなど)に関する研究、およびconstructible functionの位相的ラドン変換に関する研究を進めた.
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