研究概要 |
3次元空間内に埋め込まれたグラフを空間グラフといい,空間グラフの集合の同値関係にグラフホモロジーと呼ばれるものがある.グラフを固定したとき,この同値関係における同値類の集合は,ある演算のもとで有限生成な自由アーベル群(この群を空間グラフホモロジー群と呼ぶ.)の構造をもつ.この空間グラフホモロジー群のランクと,抽象グラフとしてのグラフの複雑さとの間の関係を調べることが本研究の目的であった.ここではグラフの複雑さをはかる目安として,マイナ-と呼ばれるグラフの半順序関係を用いた. グラフHがグラフGのマイナ-であるとは,HがGから「辺の除去」または「辺の縮約」と呼ばれる操作の繰り返しにより得られることを意味するものであるが,昨年度までの私の研究により次の命題が得られていた. [命題]グラフHがグラフGから辺を除去して得られるならば,Hの空間グラフホモロジー群のランクはGの空間グラフホモロジー群のランク以下になる. 従って,「辺の縮約」に関しても「辺の除去」の場合と同様のことを示すことが課題であったが,今回の研究により次の結果が得られた. [命題]グラフHがグラフGから辺を縮約して得られるならば,Hの空間グラフホモロジー群のランクはGの空間グラフホモロジー群のランク以下になる. 上の2つの命題を合わせることにより目標である次の結果が得られた. [定理]グラフHがグラフGのマイナ-ならば,Hの空間グラフホモロジー群のランクはGの空間グラフホモロジー群のランク以下になる. また,グラフHがグラフGのマイナ-であっても,Hの空間グラフホモロジー群のランクとG空間グラフホモロジー群のランクが等しくなることがある.本研究では,このようなことが生じる場合の条件付けも行った.
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