研究概要 |
以下,リーマン面と言えば種数2以上のコンパクトリーマン面のこととする。 (1)二つのリーマン面間の非定値正則写像の数は,有限である。 (2)リーマン面をひとつ固定したとき,そのリーマン面からの非定値正則写像があるようなリーマン面の数は,有限である。 主張(1),(2)をあわせてde Franchisの定理という。de Franchisの定理については,写像や,面の数について,位相的あるいは代数的な不変量にのみ依存する上界を与えようという試みが近年Kani,Bandman等によりおこなわれている。本研究の目的は,そのような上界をできればシャープな形であたえようとするものであった。あるリーマン面からの正則写像が存在するリーマン面を調べることと,もとの定義域としてのリーマン面のJacobi多様体のendomorphismを調べることとは,密接に関連している。Jacobi多様体を含むAbel多様体のendomorphismについては,特に写像の有限性について調べるときには,Severi-Weil metricが非常に有用である。実際,上の主張(2)に関して,定義域としてのリーマン面の種数にのみ依存する,これまで知られているものの中で最小の上界(Kaniに依る)は,Severi-Weil metricをつかってえられている。しかしそれは,想像されるシャープな形からは,程遠い様に思われる。そこで筆者は,調和形式を使ってある等式を示し,その等式がSeveri-Weil metricより多くの情報を含んでおり,その等式からSeveri-Weil metricが自然に導かれることをしめした。そして,その等式から,上述のKaniの結果よりも小さい上界を得た。
|