研究概要 |
複素解析学において,q-擬凸領域,q-擬凸関数は,重要な研究対象の1つである.平成8年度の研究では,order n-qのpseudoconvex domainの大域的なq-擬凸性を調べる問題に取り組み,n次元Kahler多様体Mのorder n-qのpseudoconvex domain Dの,与えられたmetricに関する境界距離関数dに対し,関数-log dのD上での大域的なq-擬凸性を,Mのholomorphic bisectional curvatureに関する条件下で調べた.特にMのholomorphic bisectional curvatureが正でDの境界が滑らかな場合には,Dが弱q-擬凸であっても,関数-log dの強q-擬凸性が導かれる.その辺りの現象を以前よりも詳しく調べ,結果の一部については,京都大学数理解析研究所で行われた研究集会『CR-geometryと孤立特異点』において,口頭で発表を行った.同時に,同研究所の講究録にも結果を掲載する予定で,原稿を目下執筆中である.また,近々,もう少しまとまった結果が得られた段階で,この内容を含む論文を執筆する計画である. 関数-log d,あるいはdから決まる他のDのexhaustion functionの,q-擬凸性のqという数は最良か?という,もう一つの研究目的については,まだ,多少のexampleを調べただけで,まとまった結果は得られていない.過去に似た研究結果は見られず,新しい問題で興味深いが手がかりがなく,研究手段を模索している段階である.この問題については,今後の課題として残された.
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