私は中心が有限次元の有限II型フォンノイマン環からなる可換図式に対して、周期的であるという性質を定義し、周期的可換図式の構造について研究した。この周期的という性質は、非退化という性質よりも強いものであり、周期的な可換図式から基本構成により増大列を作ったとき、この増大列は非常によい性質をもっており、それから得られる因子環の組の指数は、既に示した指数公式により簡単に計算できる。 周期的な可換図式は、図式中の包含関係を表す指数行列とトレース行列によって表現することができ、また与えられた可換図式が周期的であるかどうかの判定条件もこれらの行列をもちいて記述できるという結果を既に得ている。それで、これらの行列に着目して研究を進めた。 特に今年度は、周期的可換図式を構成する4つの環のうち3つが因子環となっている図式を研究対象とした。 まず、このような可換図式の例として、有限II型因子環とその部分因子環から基本構成を利用して得られる可換図式(A)、有限II型因子環の上に作用する有限可換群とその部分群から得られる可換図式(B)の2種類を挙げた。この2種類の可換図式について指数行列やトレース行列を計算し、(B)の可換図式では、作用が外部的であれば、各行列は有限可換群の部分群による右分解、両側分解による各剰余類により容易に計算できるという結果を得た。 以前の研究で、図式に現れる包含関係の指数がすべて4未満の場合は、周期的可換図式が4通りに限られることを証明したが、これらの可換図式が実際に存在するかどうかについては未解決であった。しかし、4つのうち3つは(A)または(B)のタイプの可換図式の形で実現できる事を証明した。 また、適当に行列を与えたとき、それらを指数行列、トレース行列にもつ周期的可換図式が存在するかどうかという問題についても研究したが、この問題に対しては現在のところ部分的な解答しか得られていない。
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