研究概要 |
本年度の研究によって,ハウスドルフ次元およびパッキング次元に代表されるフラクタル次元が、測度論的に定義されるレイニ-のエントロピー次元と,適当な条件のもとで,一致することが明らかになった.ハウスドルフ次元,およびパッキング次元については、これまでのFrostuan,Fan,Kanfiran,Howroyd,池田-玉城の研究によって,測定の次元との関連がほぼ解明されている.具体的には,集合のハウスドルフ次元は測定のリプシッツ指数か定義される量に等しく,またパッキング次元は上リプシッツ指数より定義される量に等しい(これらの結果は任意の完備可分距離空間で成り立つ).またレイニ-の定義した測度論的エントロピー次元は,Youngによってユークリッド空間にあっては,力学系の不変測度に関しては,フラクタル次元に(ある強い条件のもとで)一致することが証明されている. 私は,距離空間の集合について,レイニ-の測度の次元から,集合のある不変量を定めこれをレイニ-の次元とよんだ.そしてこれらがフラクタル次元に一致するのではないかと考えた.そして完備可分距離空間ではハウスドルフ次元は常に下レイニ-次元よりも小さいこと,またパッキング次元が常に上レイニ-次元に一致することを証明した.更に測度のリプシッソ指数がほとんどいたるところ定義であれば,これらの量がすべて一致する,すなわち測度の次元が単一であることも証明した.
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