研究概要 |
A型リー群の有界対称領域に対して以下に述べるプロジェクト1,2,3を完成させた。 1.ペンローズ変換の構成 次の2つの変換をモデルとして,数理物理で初めて用いられたペンローズ変換を非コンパクトかつ高次元の複素多様体に拡張して構成できることを証明した。 (1)(積分幾何における立場)部分多様体の族が与えられているとき,各部分多様体の上で積分する(ラドン変換,X線変換など)。 (2)(コホモロジーの引き戻し)部分多様体の族が与えられているtoki,コホモロジーの元を各部分多様体に引き戻すことができる。 2.佐藤幹夫氏の概均質ベクトル空間の理論の有界対称領域への応用 次の2つの定理を定式化し,証明した。 (1)1で構成したペンローズ変換の像が満たす偏微分方程式を具体的に求めること。 (2)逆に微分方程式を満たす任意の正則函数がペンロース変換の像として得られること。 概均質ベクトル空間の理論を用いて(1)と(2)を研究する新しい手法を開発した。特別な場合には,複雑な計算の過程が、特別な可解リー群の概均質ベクトル空間の相対不変式とb-函数を用いることで一挙に簡単になることを(関口,博士論文)で見いだした。この計算を追求することによって、b-函数と差分方程式を用いる原理を見いだし,(1)と(2)を証明した。可解リー群としては有界対称領域の運動群(半単純リー群)のBorel部分群がその役割を担い,Bruhat分解における変数分離の手法が鍵となった。 3.Gauss-青本-Gelfandの超幾何微分方程式の高階への拡張と解の有限次元性定理 ペンローズ変換はMaxwellの微分方程式の解を構成するのに用いられたわけであるが、我々の高次元への拡張では微分方程式系が,丁度,Gauss-青本-Gefandの超幾何微分方程式の高階化となっている、大域解の空間の次元が有限であることを小林俊行氏(東大)によるユニタリ表現の分岐に関する最近の一般論を援用して証明した。
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