エルゴード制御問題は確率微分方程式を状態方程式とする現象に対する時刻無限大での時間平均コストを最小化するときに出てくる問題で、従来の指数減少的に定義されるコストが現実的でないとの指摘を受け最近になって研究されだしたものである。ところが、エルゴード制御問題はエルゴード的極限を最小化するため問題が難しく、付随して出てくるベルマン方程式もC^2-クラスで解かないと応用が効かないため満足すべき結果はほとんどなかった。 今年度の主な成果は1次元エルゴード制御問題に付随して出てくるベルマン方程式をC^2-クラスで解く手法を見つけ出し、これを利用して最適制御の特徴付けを行ったことである。この手法は解を構成する空間の設定がカギで、巧妙な設定により解の一意性と表現が出てくる。この結果はまとめられ、確率制御問題等に関する専門雑誌Stochasticsから今年度出版された。また、この手法を応用してコストに制御による損失分が加わる場合の1次元エルゴード制御問題も解くことができた。そこでは、対応するベルマン方程式をこの手法を用いて積分方程式に変換して、その積分方程式を関数解析的に解くという方針が取られた。この結果もまとめられ、まもなく制御問題等に関する専門雑誌Applied Mathematics Optimizationから出版される予定である。なお、昨年の12月に神戸で開かれた国際シンポジウム『The 35th IEEE conference on Decision and Control』で、多次元のエルゴード制御問題に対する解法についての講演を行った。
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