研究概要 |
本研究では以下のような成果が得られた. 1.自由境界の運動に関する時間発展方式を陽に持たない自由境界問題に対する数値解法の開発とその応用. 自由境界問題の中には自由境界の運動に関する時間発展方程式を陽に持たないものがある.このような問題は数値的にといえども解くのは容易ではないし,中には高精度計算を行わないと計算が途中で止まったり意味のない解が得られてしまうような微妙なものもある.そこで,本研究では,自由境界の時間発展方程式を導出して既存の高精度数値解法を適用し,このような自由境界問題を高精度に数値計算することを考えた.自由境界の運動方程式を陽に導くことは,写像関数を用いた固定領域法を適用することで成功した.また,この手法は同時に問題を固定領域の問題に変換するため,既存の高精度数値解法が適用できるという特徴も持っている.本手法を,自由境界の運動に関する時間発展方程式を陽に持たない,双曲型方程式に支配される自由境界問題に適用したところ,クリティカル時間など興味深い数理現象を発見した. 2.高精度数値手法の開発とその応用. 1.の自由境界問題の数値解法の開発に関連した研究も行った.いままでは自由境界問題に対して任意精度で数値計算することはできなかった.それをスペクトル選点法と写像関数を用いた固定領域法を併用することで可能にした.ただし,この手法は時間に関して陰解法となるために反復計算が必要となり計算コストがかさむ.(したがって,パラメータサーベイが必要とされる1.の自由境界問題に対して本手法は適用しなかった.)そこで問題の線形化手法の開発と効率的な反復法の開発を行った. この高精度数値手法であるスペクトル選点法を用いて,カオスの解析を実用的な計算精度限界である4倍精度で行った.今回もアトラクターのフラクタル次元の不連続性が確認された.
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