並列計算、特にCCSの通信に関する研究と、それに基づく通信モデルを解析するための実験をTransputerおよびPVMの2種類の並列コンピュータシステムの上で行なった。 CCSでは、遷移関係の定義とそれに基づく(強)双模倣関係の定義のしかたでプロセスの等価関係の強弱が変わる。特にCCSを高階化したπ-計算においては、通信で渡される値によって遷移先を区別する遷移関係(early transition)と、通信で渡される値によらない遷移関係(late transition)が、プロセスや通信経路の動的な生成を記述するために導入されている。しかし我々は静的に決まったネットワークトポロジによって接続されたなかで通信を行なうプロセスを研究の対象にした。 このように高階化しないままのCCSで記述出来るプロセスを考察する場合には、プロセスや通信経路の動的な変化を考慮する必要はないが、通信で渡される値によって異なるプロセスへ遷移が起こる場合があるので、通信で渡される値については考慮しなければならない。そこで、上記後者の遷移関係を基礎にした(強)双模倣関係とその上の等価関係について研究した。この遷移関係の主要な特徴は、遷移システムの導出に際して、実際に通信が行なわれるまでは、そのプロセスの遷移の導出を行なわない、あるいは通信される値をパラメータ化し、それを基に遷移の導出を行うことにある。 なお、今回はこの遷移関係および双模倣関係をカテゴリー論的に解釈するところまでは至らなかった。もともと双模倣関係の導入の方法が、双帰納法による最大不動点で与えられるという非有基的集合論を基にしているので、プロセスに制限を与える必要があると思われる。
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