研究概要 |
この研究の最終的な目的は,非線型な遷移過程を持つ離散力学系,特にセル・オートマトンについて一般的な挙動解析の方法を与えることである. 離散的代数系は,1960年代に生物学の分野で注目され,生態の形成過程や神経伝達過程が離散的代数系により記述できることが報告された.一般には,自己同型的なモデルやカオス的な要素を含むモデルの解析に有効であると考えられている.しかし,この分野の研究の多くは物理学的あるいは生物学的な直感を含むものが多く,数学の立場から見て理論的には不充分な点があると考えられる.離散的代数系の代表的なものとして知られるセル・オートマトンは1960年代J.von Nenmannによって提案されたが,これについては1980年代に入って,S.Wolfram,P.Guan,Y.He,E.Jenらにより,代数的整数を用いた新しい手法が提出され,数学的な枠組みの中での議論が可能となった.本研究は代数的整数論を用いて,離散的代数系のさらに詳しい解析を行う事を目的としている. 今年度は,代数的整数に単因子論を応用し,昨年度行った行列のconvolutionを用いる方法を一般化して非線型セル・オートマトンの挙動の解析をすることを研究目的とした.具体的には,セル・オートマトンの解析を行い,一様性の条件を緩和することが離散力学系にどの様な影響を与えるか検討した.あわせて,様々な境界条件についても同様の検討を行った.
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