本研究の目的は、原始星、T Tauri型星など前主系列星をX線で観測し、星形成の初期段階におけるX線放射メカニズムおよび活動性の進化を統一的に調べることである。このためさまざまな種類の天体を比較検討する必要があり、本年度は大質量星も形成されているオリオン星雲と小質星が生成されているカメレオン座分子雲IIのデータ解析を行い、結果を検討した。オリオン星雲では、原始星の存在している領域が密集領域であるため、あすか衛星の角分解能では、原始星候補からのX線を特定することができなかった。しかし、それ以外に多数のT Tauri型星が検出でき、これらが高温のプラズマガスからの放射として説明できることがわかった。カメレオン座分子雲IIの観測では全部で8つの天体を検出することができた。しかし、この領域に存在する原始星候補からは有為なX線を検出することができなっかった。原始星候補からのX線が検出できなかったカメレオン座分子雲IIと検出された蛇使い座分子雲、南の冠座分子雲との違いについて今後検討を進めたい。また、オリオン星雲とカメレオン座分子雲IIに存在するT Tauri型星の特徴を比較した結果、オリオン星雲の天体はカメレオン座分子雲IIの天体に比べて、ガスの温度が高温になる傾向があり、0.7-10keVのエネルギー領域の光度も大きいことがわかった。温度の違いは何が原因であるのか、今後サンプルを増やし、検討を行いたい。 この他、中質量の前主系列星であるHerbig Ae型星の観測も行い、X線スペクトルの解析から高温ガスからの放射であること示した。高速の星風や表面磁場を持たないと考えられているこの種類の天体で、観測されたような高温のプラズマガスを生成するメカニズムについて検討を行った。
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