研究概要 |
2次元軸対称および3次元の流れを計算できる,多次元輻射流体力学計算コードの開発を行った.本研究で確立を目指した計算法は従来行われていた近似法とは全く異なり,光学的に厚い状況から薄い状況まで,均一のアルゴリズムで計算することが出来る計算法である.従って星・惑星系形成問題のように,初期には全領域で光学的に薄い状況ながら後期には一部で光学的に厚くなり一部は光学的に薄いままであるような問題を計算するのに,最も適した計算法である. 本奨励研究に支援された今年度の研究では,計算法の骨格部分のコーディング及び試験,ベクトル並列型大型計算機および超並列型大型計算機への実装および試験,などが行われた.これらのコーディングと試験の結果,本計算法は当初の予想通り,光学的厚さに関して広い状況にわたって精度の良い結果を与えることが確認できた. 一方,本計算法は非常に多くの計算量とメモリを消費する.これらを低減することが,実際の計算を大量に行う際には必要となってくるため,計算コードの効率化にも取り組んだ.その結果,計算法の中で最も計算量を必要とする部分については,ベクトル並列型大型計算機,超並列型大型計算機それぞれに対して,非常に効率の良い計算アルゴリズムを発見することが出来た.今後は他の部分についても効率化を図っていく予定である. 計算コードはほぼ完成しつつある段階であるが,それを科学的問題に応用した計算は,残念ながらまだなされていない.しかし,本計算コードを応用して計算できる興味深い問題は,星・惑星系形成問題に限らず,種々の分野に渡って数多くあることも明らかになってきた.今後はそういった問題に積極的に挑戦していきたいと考えている.
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