研究概要 |
原子核の準位密度は複合核反応を記述するのに用いられるが,中でも中性子共鳴エネルギー周辺の核準位密度は中性子捕獲確率を理論的に求めるのに必要で,元素の合成を理解する上で欠かせない。本研究では,質量数50-70領域(Fe-Ni-Zn領域)の中性子共鳴を含むエネルギー領域での核準位密度について,近年開発された殻模型モントカルロ法を用いて微視的な立場から調べ,次のような結果を得た。 1.^<56>Fe及び^<68>Znについて全準位密度を実験値と比較した。いずれの核でも理論値は実験値を大変よく再現する。 2.^<56>Feにおいて有限温度ハートリー・フォック計算をも行い,その問題点を明らかにした。ハートリー・フォック近似は低温で不十分で,ことに形状相転移のため異常な振舞いを示す。しかし,この相転移の効果は2体相関により消失する。 3.補助場モンテカルロ法におけるパリティー射影のアルゴリズムを開発し,パリティー毎の準位密度を求めた。正負どちらのパリティーでも準位密度は後退ベ-テ公式でよく記述できるが,そのパラメータは,フェルミ・ガス模型の予言と異なりパリティー依存性を持つ。特に,^<56>Fe周辺では準位密度パラメータが強くパリティーい依存することが示唆された。このパリティー依存性は,今まで十分に認識されていたとは言えず,中性子捕獲確率にどのように影響するか興味が持たれる。 4.準位密度パラメータのパリティー依存性は質量数と共に変化し,0g_<9/2>軌道がフェルミ準位に接近するにつれて弱くなる。 なお,上記のうち^<56>Feに関する結果を中心に論文にまとめ,投稿中である(Yale大学Alhassid教授との共著)。
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