膨張宇宙での密度揺らぎ、及び温度揺らぎの解析を数値的及び解析的に行った。まず、宇宙の幾何構造や、密度の総量などと温度揺らぎの空間パターンの関係を調べ、実際の温度揺らぎの観測データと正確な数値計算から求めた理論値との比較を行い、モデルに対する制限を付けた。現在の観測データは未だ特定のモデルを排除するというほど精度が良いものではないが、あまり宇宙の密度が低いモデルは望ましいものではない、という傾向を得た。次に、密度揺らぎの非線形成長が温度揺らぎにどのような影響を与えるかについて解析を行った。これは近い将来に観測されるであろう小さい角度スケールでの温度揺らぎに影響を及ぼすものである。さらに、小さいスケールでの密度揺らぎの発展について解析手法を用いてその物理過程の解明を行った。その結果は数値計算とも良い一致を示した。解析的手法を用いることで、個々の物理過程を別々に調べることが可能になり、その理解が進んだ。最後に、宇宙の質量の大部分を担っていると信じられているダ-クマタ-の正体がアクシオンであった場合について、宇宙の大規模構造の形成や温度揺らぎの発展について詳しい解析を行った。その結果、通常自然に生成されると信じられている等曲率揺らぎの初期条件だけでは温度揺らぎ、大規模構造どちらの観測もうまく説明することができず、断熱揺らぎの成分を混ぜる必要があること、さらにその混合比によっては、断熱揺らぎだけを考える通常のコールドダ-クマタ-の問題点を回避することができることを示した。
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