住友重機械工業株式会社との共同研究で構築してきた小型陽子サイクロトロンを利用した低速偏極陽電子ビームライン(愛媛県東予市)で実験を行った。 この装置はエネルギー18MeVの陽子をアルミニウム標的に照射して、短寿命放射性同位元素27Si(半減期4.1秒)を連続的に生成し、そのβ+崩壊により生成した陽電子を利用するものである。この陽電子は最大3.85MeVの連続的エネルギー分布を持つが、本研究テーマで開発されたタングステン薄膜を用いたモデレーター(減速材)を利用することにより、1eV程度の単色な低速陽電子ビームをつくることができる。 25μmの厚さのタングステン膜を真空中で1800度に熱して、清浄化を行い、短寿命放射核の前方に置くことにより、透過型モデレーターとして使用した。実験の結果、モデレーターの変換効率はおよそ1/10000であり、毎秒5×10^5の強度の偏極陽電子ビームを得ることができた。 このビームラインと高効率モデレーターを用いた陽電子ビームの偏極度測定実験を行い。その結果は、Applied Surface Science誌に投稿されて、受理された。
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