28閉殻近傍の原子核の高角運動量状態を生成するため、日本原子力研究所(原研)においてビーム照射実験を行った。平成7年10月の第1回実験では、カルシウム標的核を硫黄32ビームで照射した時に発生するガンマ線のエネルギーを精密測定し、これまで知られていなかった原子核の励起準位を多数確認した。近隣の原子核との類似点或いは相違点を調べる目的で、平成8年4月の第2実験では同じ標的核を前回のビームの安定同位体である硫黄33で照射した。やはり非常に多くのガンマ線が観測され、その中には変形した原子核に特有の回転帯的なスペクトルが複数見られた。このことから、基底状態では球形である閉殻近傍核が、高角運動量状態では変形していることが推定される。しかしながら現時点では解析は終了しておらず、各原子核の構造の詳細を導き出すには至っていない。また、期待していた原子核の超変形状態は、今のところ確認されていない。 この研究に関連し、28閉殻と50閉殻の間に位置する原子核の高角運動量状態について、筑波大学在職中に筑波大加速器センターで行った実験の解析を進め、その結果を論文として投稿し受理されている。 以上のようなデータ処理・解析を行うため、既存のパソコンのOSとしてパソコン用UNIXとして開発されているLINUXを新規に導入したほか、各種周辺装置を整備した。研究費の使用内訳が申請と異なり設備備品等に偏っているが、これは身体上の理由で実験参加を見合わせたため国内旅費と消耗品費が余剰し、これを当初科研費には計上していなかったノート型パソコンの購入に流用したためであるので、お許し願いたい。また、申請時に「その他」に計上していた書籍代を設備備品費に改めている。
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