研究概要 |
層状半導体結晶中の積層欠陥に束縛された励起子は、その積層面内の方向にのみ運動することができる擬2次元励起子と考えられている。その中でも層状結晶Bil_3の積層欠陥励起子は特に大きな空間伝播性を持っており、その伝播速度は非常に速いことがこれまでの研究で明らかにされてきた^1。さらに最近、この励起子の高密度状態が空間的に非常に大きく拡がることが実験的に観測された^2。 層状結晶における積層欠陥励起子の振る舞いに見られるように、固体結晶における励起状態の空間伝播はその励起子の空間的挙動に支配されており、励起子の動的振る舞いに関する知見を得るためには時間分解分光だけでなく空間分解分光による励起子の空間的振る舞いに関しても実験的に重要であることがわかる。 本研究では、励起子のコヒーレンスの空間的拡がりを観測するために、非線形光学効果を利用した4光波混合法を空間分解型に改良して測定を行った。その結果、マクロな領域に渡って励起子の空間的コヒーレンスが拡がっていることを初めて観測することに成功した。 さらに本研究では、これまで行ってきた層状半導体結晶の励起子系以外の励起子系でその空間的挙動を明らかにすることを目指し、アルキルアンモニウムメタルハライド結晶の励起子系に注目した。本研究では、アルキルアンモニウムビスマスブロマイドに関して単結晶を育成することに成功した。その試料に対する基礎的な光学スペクトルの測定を行い、そのスペクトルに顕著な励起子構造を見い出すことに成功した。 今後、このアルキルアンモニウムメタルハライド励起子系に関して、これまで行ってきた時間・空間分解分光を行い、その空間的振る舞いを明らかにすることで、層状半導体の積層欠陥励起子との空間的振る舞いと比較し、励起子の空間的挙動に関する一般論を展開することを目指す。 参考文献 1.T.Kawai,S.Shimanuki,T.Karasawa,I.Akai,T.Iida,T.Komatsu,J.Luminescence 48&49(1991)721 2.H.Kondo,T.Kawai,T.Karasawa,Solid State Communications 94(1995)129
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