カーボンナノチューブの電磁場による配向制御について研究した。電磁場によりカーボンナノチューブが配向し、かつ、金属のカーボンナノチューブと半導体のカーボンナノチューブでは、電場と磁場に対する応答の強さが違うのではないかと考えた。そこで、これを利用して電子構造の異なるカーボンナノチューブの配向を独立に制御する事を目指した。 メタノール液中に超音波でカーボンナノチューブを懸濁し、懸濁液を電磁場中でガラス基板上に滴下し乾燥させた。この基板上のカーボンナノチューブの配向を高分解能走査型電子顕微鏡を用いて観察した。 400V/cmの電場中で作成した試料について、予想通り、電場の方向に配向しているのがみられた。しかし、配向の程度は小さく、再現性よく作製するには至っていない。より強力な電場を印加する準備をしている。磁界中で作成した試料については、1.7Tまでの磁場下では配向がみられた試料はなかった。 電場、磁場どちらの場合においてもカーボンナノチューブが応答しないことがみられたわけではない。配向制御の障害になったのは、カーボンナノチューブ同士が絡み合って凝集する点であった。このため、電場や磁場をかけても個々のチューブの反応が現れにくく、充分なサンプリング数が確保できなかった。この点を解消する適切な試料作製方法を模索したが達成できず、電子構造の違いにより配向が異なることを確認するには至らなかった。 なお、カーボンナノチューブ懸濁液作製のための超音波洗浄機と、走査型電子顕微鏡観察の記録およびデータ処理のための光磁気ディスクデータ記録装置を本補助金で購入した。
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