最近、2本鎖梯子型格子上の銅酸化物が超伝導になり、注目を集めている。理論的にも偶数本鎖の梯子上の強相関電子系ではスピン・ギャップが開くことによって超伝導になることが予想されていた。しかし、そのような系の最も単純化された模型である2鎖ハバ-ド梯子模型については、弱結合での解析的な結果は超伝導を支持しているのに対して、数値計算は必ずしもこれを支持していない。 そこで我々は量子モンテ・カルロ法によって2鎖ハバ-ド梯子模型の超伝導相関を計算した。その結果、離散的なエネルギーレベル間隔がフェルミ準位付近で密になっているときに限って弱結合理論と整合する結果が得られることがわかった。これは有限系の計算ではスピン・ギャップがレベル間隔がに比べて十分大きくないと弱結合理論を再現できないことを示唆しているものと思われる。超伝導を支持しないような数値計算結果がこのような有限サイズ効果によるものだとすると、弱結合理論の予想どおり、あまり相互作用が大きくない領域では超伝導になるものと考えられる。 一方、奇数本鎖の梯子はスピン・ギャップが開かないことから、超伝導にならないことが予想されていた。しかし、例えば3本鎖のハバ-ド梯子模型においてはスピンのモードが3つあり、ギャップが閉じているのは一つだけで、残りの2つにはギャップが開いている。そこで我々は3本鎖のハバ-ド梯子の相関関数を弱結合理論により計算した。その結果、部分的に開いているスピン・ギャップを利用して、ここでも超伝導が支配的になることがわかった。これもまた、2本鎖の場合と同様に量子モンテ・カルロ計算により裏付けた。 梯子系における超伝導を支持するこれらの結果がどのように2次元につながっていくのか興味深い。特に、我々は、2次元のd-p模型やハバ-ド模型でも超伝導の可能性を示唆する結果を得ており、これらとどのようにつながっていくかを調べることが今後の課題である。
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