液体^4Heの超流動転移点近傍での表面張力の振る舞いは、超流動転移というバルクの性質の変化が表面にどのような影響を与えるか、という基本的な問題を提起して興味深い。さらに、液相一気相臨界点を異なり、転移点の高温測低温測ともに表面が存在するというユニークな特徴を持つ。本研究では、液体^4Heに不純物として^3Heを加え、転移点近傍の表面張力が定量的にどのように変化するかを測定することにより超流動転移と表面張力の関係を明らかにする。具体的には、1)表面張力の異常はBose凝縮体(または超流動密度)に結びつけられるかどうか。2)MikheevとFisherにより指摘された2mKの異常の不純物効果とそのメカニズムはなにか、について新しい知見を得ることを目的とする。 本研究では、実験の準備としてクライオスタットの改良および測定系の安定度を向上させる改良を行うと同時に、これまでに、予備的な実験として次のことを行った。 1)液体^4Heの表面張力の絶対値の測定:最近、フランスのグループは、薄膜の第3音波の測定より表面張力の絶対値がこれまでの値より6%ほど大きいと報告した。本実験では、試料液体の厚さの変化による表面張力の絶対値の系統誤差を評価したが系統誤差は見られず、これまで報告された絶対値に一致する結果を得た。2)小量の^3Heを不純物として混合したときの表面張力の測定:液体^4He試料に0.14%の^3He不純物を混合し、λ点近傍の表面張力の異常を測定した。予備的な測定があるが、純粋な^4Heとほぼ同様な振る舞いをすることが見いだされた。つまり、上記の2mKの異常は^3He不純物の濃度には依存しない。これは、この異常のメカニズムの解明に手がかりを与えるものと期待される。
|