スピネル型結晶構造をもつCuT_2X_4化合物(T=遷移金属、X=カルコゲン)は、T、Xを変化させることにより、金属、絶縁体、また、超伝導体になるなど、多彩なふるまいをすることが最近発見された。本研究では、CuT_2X_4の電気抵抗や、熱膨張を多重極限(低温・高圧・強磁場)下で測定し、金属・絶縁体転移や超伝導特性の圧力依存を明らかにすることを目的とした。 まず、構造相転移をともなう金属・絶縁体転移を示すCuIr_2S_4を取り上げ、2GPaまでの高圧(静水圧)下において電気抵抗と熱膨張を測定した。電気抵抗は、室温付近(スピネル型立方晶)では金属的、220K(=T_<M-I>)での不連続な(約3桁)とびを経て低温(正方晶)では半導体的ふるまいをする。T_<M-I>は圧力とともに約30K/GPaの割合で上昇し、転移点における電気抵抗のとびは次第に小さくなる傾向を示した。熱膨張の測定からは、この転移が体積の不連続な変化として検出され、T_<M-I>の圧力による上昇は電気抵抗の測定結果とよく一致した。2GPaまでのこれらの結果から室温では3GPa程度の圧力によって低温相(正方晶、絶縁体相)が誘起されると予想される。室温において高圧下のX線回折実験をおこなったところ、低圧で安定であったスピネル型立方晶構造が3GPa付近で混晶相を経て正方晶に移り変わる様子が観測された。 また、この物質は合成が難しく、現段階で得られている試料は密度の低い焼結体である。そこで、より詳細な物性測定をおこなうために現在衝撃圧縮法を用いた合成実験が進行中である。
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