本研究では、粉粒体の多彩で複雑な構造を「非弾性衝突球の集団」という近似で理解する為に、統計力学的なアプローチを用いた。アプローチでは相互作用をする単純な要素をたくさん集める事により、多体の効果として集団的な非自明な性質を説明する。例えば、気体、液体、固体、などは、原子が多様集合して、物質になることにより生じる性質だが、個々の原子は固体、液体、気体、という性質を保有しているわけではない。あくまで、原子と言う粒子が多数、集合する事により、液体性、固体性、気体性、という非自明な効果が現れるのである。 この様な方向性を追求するため、本研究計画では多粒子系のニュートン方程式を数値的に計算する計算機シミュレーションを行なった。数値計算の利点はいろいろな場合、つまり、振動下の粉体層、傾斜板上の粉粒体流(雪崩や土石流のモデル)、気相流動層、などの研究を全て「非弾性衝突をする剛体球」という枠組の中で統一的に議論できた。実験ではこの様なアプローチは困難である。同じ粉粒体を粒子を用いて、これらの現象を全て実験することは困難だからである。また、現実の粉粒体粒子は決して理想的な「非弾性衝突剛体球」ではあり得ないが、数値シミュレーションの中であれば、いくらでも、理想的な非弾性衝突球のシミュレーションを行なう事が出来た。
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