研究概要 |
希ガス固体表面および固体中に励起子を生成すると,種々の緩和過程の後に中性粒子やイオンの脱離が観測される(電子遷移誘起脱離,Desorption Induced by Electronic Transitions : DIET).中性励起原子の電子遷移誘起脱離過程に関しては,Cavity Ejection(CE)とExcimer Dissociation(ED)の二つの脱離機構により,脱離現象を定性的に説明ができることが明らかにされている.本研究は,励起子生成に起因してCE機構により脱離する中性準安定励起原子の,絶対脱離収率の測定を目的とする. 実験は分子科学研究所極端紫外光実験施設(UVSOR)を用いて行った.固体NeとArを標的として,励起子生成領域での脱離収率の入射光エネルギー依存性を測定した.絶対値導出に必要な,入射光強度・検出器の絶対量子効率・脱離粒子の角度分布などを独立に決定し,絶対収率を得た.Ne固体における1次の表面(S1)・固体(B1)励起子,および2p^53p型表面励起子(S')の生成に起因するCE脱離機構による脱離収率は,それぞれ(2.3【.+-。】0.7)×10^<-3>,(1.4【.+-。】0.4)×10^<-3>,(7.8【.+-。】2.3)×10^<-4>であった.Ar固体に関しては,表面1次励起子(S1)において1×10^<-5>であった. 今までの希ガス固体からの脱離過程に関する研究は,主に定性的な現象の議論にとどまっていた.本研究で得られた絶対脱離収率の結果により理論計算との定量的な比較も可能となり,電子遷移誘起脱離(DIET)という現象の理解にとって,新しい方向性を示すものとなった.
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