研究概要 |
光共振器内での逆コンプトン散乱を用いた高エネルギー光源の開発研究を行った。基礎研究として波長1μm,パワー500mWのCWレーザーからの光を高性能光共振器に蓄積し(蓄積パワー1kW),75kV,10mAの電子ビームとを衝突させる実験行った。実験においては、電子ビームとレーザー光は150°の角度で衝突させた。これまでに定性的に散乱光の増倍が確認されていたが、今年度は測定器の較正実験を行い、定量的な散乱光の観測を進めた。散乱光の空間分布及び光量に関しては再現性あるデータが得られた。又、散乱光スペクトルを回折格子分光器で観測することにより、データの信頼性を向上させた。散乱光量、散乱光スペクトル共に理論との良い一致を見た。即ち、4000倍に光が蓄積された時は元のレーザー出力から計算される散乱光の4000倍の光量が観測された。また、散乱光スペクトルにおいても理論から予想される波長域に散乱光ピークが観測された。この実験により本方式の原理実証が確認された。又、実用化に向けて光蓄積の長時間安定化につとめ、11時間以上にわたる光蓄積を達成した。この技術を発展させ、従来のγ線発生装置に適用しうる共振器長数mの光共振器の検討及び予備実験を行った。共振器の安定化に必要な技術的な問題点が明かとなった。さらに、典型的な電子蓄積リングの性能を電子ビームとレーザー光とのフィリングファクターをパラメーターとして散乱光量の評価を行い、相互作用の最適化を検討した。
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