高分解能ドリフトチューブ型イオン移動度計を利用した、大気微量成分測定法を開発するための基礎実験を行った。 まず、対流圏大気中におけるイオン-分子反応によってイオン組成が時間とともにどのように変化するのかを移動度スペクトルを用いて精密に調べた。正イオンにおいては、イオン生成後数10ms後に移動度1.8cm^2V^<-1>s^<-1>に1本のピークだけが現われ、反応時間やイオン-分子反応モデルとの比較からアンモニアイオンであると推定された。その後移動度スペクトルでは反応時間1sの間にかけて5本のピークが現れた。これらのイオン組成は現在のところ不明であるが、他の研究グループによる質量分析計の測定結果などと比較すると、アンモニアよりも陽子親和力の大きなピリジンや他のアミン類であると推定される。また、移動度が0.9cm^2V^<-1>s^<-1>付近に4本のピークが存在することも確認された。移動度の値からこれらのイオン種の質量は400amuを超えると考えられ、そのような重いイオンが対流圏において生成されるメカニズムは現在まで知られていない。 移動度スペクトルに現れたこれらのイオン種を明らかにするために、移動度-質量分析システムの試作を行った。質量分析部は4重極マスフィルター、チャンネルトロン検出器およびターボ分子ポンプ(2401/s)から成る。また、ドリフトチューブ型移動度計とのインターフェース部には、ピンホールおよびスキマ-を配置し2台のロータリーポンプで排気するようにした。今後、このシステムを用いてイオン種の同定作業を進めて行く予定である。
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