研究概要 |
太陽系最古の火成岩と言われているアングライト隕石のうち,最近見つかったLEW87051とAsuka881371について詳細な鉱物学的研究を行ない,ともに急冷された玄武岩質の組織を持ち,お互いの鉱物化学組成なども非常によく似た特徴を示すことを指摘した.また,両者はともに,斑晶のカンラン石がコアからエッジにかけて2段階の特異な化学ゾーニングを示しているが,申請者は,カンラン石結晶が成長後に,一度コアの部分だけを残して溶けてしまい,エッジの部分が再度結晶化したことが原因ではないかという説を検証するために電気炉を用いた溶媒実験を行なった。実験に用いる物質としてはアングライトAsuka-881371のカンラン石外来結晶を除いた部分のバルク化学組成を計算した組成を採用し,計算した組成の出発物質を試薬を用いて調合した.アメリカのSan Calros産のカンラン石を外来結晶として利用し,出発物質に混合して使用した.出発物質に数粒のカンラン石結晶(〜1mm程度)を混ぜたものを1300℃,1250℃などの条件で,48時間保持し,カンラン石と周りのガラスとの間で元素の拡散プロファイルを得た.現在,実験で得られた様々な元素の拡散速度がこれまでの文献で示されている値と同じであるかチェックを行なっているところである.また,このように48時間一定の高温で保持したサンプルをその後,およそ1〜100℃/時間程度の冷却速度で石基の部分を結晶化させる実験を行なった.現在,一連の冷却実験の半分ほどを終了し,100℃/時間の冷却速度はアングライトには速すぎるという結論を得ている.10℃/時間程度からの冷却速度が適当なようなので,さらに詳細な実験を行なっているところである.また,このような実験によりアングライトに見られるカンラン石の2段階ゾーニングはうまく解釈できることが分かった.
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