研究課題/領域番号 |
08740411
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
岩石・鉱物・鉱床学
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 美千彦 東京工業大学, 理学部, 助手 (70260528)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 斜長石 / 部分溶解 / 固溶体 / カイネティクス / マグマ混合 / 雲仙普賢岳 / 火山噴火 / 反応速度 |
研究概要 |
主要造岩鉱物の大部分は固溶体を形成し、より高温成分に富む固溶体組成と平衡にあるような非平衡メルトに対して部分溶解するが、その機構はよくわかっていなかった。今回研究代表者はAn値60の斜長石結晶を用いて圧力200MPa,温度1050-1150℃における部分溶解実験を行った。その結果、実験産物の組織の解析から、斜長石結晶は反応前線において一度調和的に非平衡メルトへ溶解したのち、より高An値を持つ斜長石が再結晶するという“dissolution and recrystallization"機構によって部分溶解が進行することがわかった。過去に1気圧下の実験(Tsuchiyama 1985)で得られた結論では、この反応は斜長石種結晶内のNaSi-CaAl相互拡散を経て、これが律速過程であるとされていたが、本実験結果はこのモデルを支持せず、律速過程は斜長石が調和的に溶解する表面反応であることが示唆された。さらに“dusty zone"の前進速度は1150℃において約1.0〜2.5×10^<-8>m/s、1150℃において約3.9〜8.8×10^<-10>m/sと求まった。この結果は、無水1気圧下の反応速度より3〜4桁速い。これは、反応経路が斜長石固溶体内の元素拡散という非常に遅い過程を経ていないこと、水の存在によってメルト内の元素拡散、斜長石の調和溶解や再結晶の表面反応のいずれもが飛躍的に高速になったことによると考えられる。また、このような部分溶解反応によって、天然の火山岩中に産する斜長石斑晶にしばしば観察される部分溶解組織(“dusty zone"、“sieve texture"等と記載される)を非常によく再現できた。応用例として、雲仙普賢岳平成噴火の噴出物中に含まれる斜長石斑晶のsieve textureの幅に本実験結果を適用すると、高温マグマが低温マグマのマグマ溜りに注入されてから噴火にいたるまでの時間は数か月から数年と見積られ、マグマ混合が噴火の引き金になっていることが示唆された。
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