研究課題/領域番号 |
08740422
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
地球化学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
天川 裕史 東京大学, 海洋研究所, 助手 (60260519)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 表面電離型質量分析計 / Th-232 / 抽出クロマトグラフィー / 同位体希釈法 / 相模湾 |
研究概要 |
本科学研究費補助金による研究実績は以下の3つにまとめられる。 1.イオン化効率の検討 表面電離型質量分析計におけるTh(トリウム)のイオン化条件の検討を行い、1000pg(ピコグラム、×10^<-12>グラム)オーダーの極微少量での効率の良いイオン化が可能であることを明らかにした。 2.分離濃縮法の検討 通常、海水中のThは鉄共沈法で回収を行い、さらに分離濃縮を行なう。しかしながらこの方法では鉄を除去するプロセスでイオン交換カラムによる分離を何回も繰り返し行う必要が生じる。その結果として、試薬等からのトリウムの汚染の危険性が高くなる。そこで、トリウムを選択的に吸着する抽出クロマトグラフィー用カラム(市販品)を用いるトリウムの分離濃縮法の検討を行った。そして、鉄の沈殿物(鉄水酸化物)を酸に溶解した後、上記のカラムで各々1回の吸着と溶離を行うことによって鉄を除去しトリウムを分離濃縮する方法を開発した。 3.海水試料への応用 上記の方法を相模湾で採水した海水に実際に適用し、同位体希釈法によってTh-232の定量を行った。海水試料1リットルを使用した定量値の誤差はその大半が5%以下であり、10%以上の誤差を含む従来の日本近海のデータに比べ、精度の上で大いなる改善が認められた。また、従来のデータは200リットル以上の海水を使用して定量を行っており、感度の面でも飛躍的な向上が認められたことになる。 相模湾のTh-232の濃度は50〜400pg/kgであり、外洋(10〜100pg/kg)と陸に極めて近い海域(250〜500pg/kg)との間の値となった。これはトリウムの濃度が陸に近い海域から外洋へと行くにつれ濃度が低下することを示している。このことは、トリウムは陸から外洋への物質輸送の指標となる可能性を示唆している。
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