宇宙空間で普遍的な存在と考えられるヘキサンと衝撃波の相互作用を明らかにするため、ヘキサンを封入した容器に弾丸を衝突させ、ヘキサンに衝撃波を作用させた。この実験は、弾丸長さを10〜40mm、弾丸速度を220〜1040m/s、ヘキサンの初期温度を77、193、273Kと変化させて行った。この実験の結論を以下に述べる。 弾丸長さを変化させた実験から、衝撃合成はヘキサンに衝撃波が作用している極めて短時間(10^<-6>s)の間に起こっていることが明らかになった。この短い反応時間は、衝撃合成が、従来の熱分解反応と較べてより少ない枝状炭化水素を生成する原因となっている可能性がある。さらに、脱水素反応は衝撃合成の重要な反応のひとつであり、n-C_<12>はヘキシルラジカルの再結合反応で生成している可能性がある。 初期温度を変化させた実験からは、生成物の収量は、衝撃温度ではなく衝撃圧力に大きく依存していることが明らかになった。また、ヘキサンが固体と液体の場合では衝撃合成の反応機構が異なることが、生成物き組成比の考察によって明らかになった。さらに、衝撃圧力が増すほど、低分子生成物に比べて高分子生成物の収量が増すことも明らかになった。この現象は、反応時における活性化体積変化によるものと思われる。 以上より、衝撃合成は宇宙地球化学分野はもちろん、有機合成分野においても重要なテーマになり得るといえる。 なお、本研究計画のうち、生成物の同位体比測定については、共同利用施設の装置がまだ調整未完了のため実行できなかった。
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