研究課題/領域番号 |
08740428
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
地球化学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉本 敦子 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (50235892)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | メタン / 湿地 / ミズゴケ / 安定同位体 / 水循環 / 植物 |
研究概要 |
地球規模のメタンの動態と気候変動に関して特に重要と考えられるミズゴケ泥炭湿地である深泥池(京都市)でメタンの生成機構と植生および、水循環に関する調査を行った。メタン放出速度は植生により大きな違いがみられ、ミズゴケが優占する場所ではメタン放出量が小さく、ヨシ、ミツガシワなどの湿地植物が優占する場所では大きなメタン放出量が観測された。ミズゴケは他の植物と違い、細胞壁が極めて分解しにくい有機物からなっており、これがメタンの放出速度を小さくする大きな要因となっている。メタンの同位体比測定結果から、メタンの生成経路は季節変化し、夏は易分解性有機物から酢酸を経てメタンが生成される割合が大きくなることがわかった。また、湿地の表面水中ではメタンは酸化されているが、夏期に大気に放出されるメタンは酸化の影響をほとんど受けていないと考えられる。 代表的な植物について、植物中の水と土壌中の水(鉛直プロファイル)の酸素同位体比を測定し、植物が吸収している水の深度を推定し、また、窒素同位体比から植物が利用している窒素源の推定を行った。ヨシは深い根をはり、泥炭の分解により生成する栄養塩を深部からも吸収している。一方、ミズゴケは表層の泥炭の分解により生成する無機態窒素に加え、大気由来の窒素を多く利用していると推定された。また、水の同位体比から、観測を行った深泥池浮島の水はほとんど動かず、このことがミズゴケの生育できる環境を作っているといえる。ミズゴケは貧栄養な環境でのみ生育できる植物である。それゆえ、水質の悪化や水循環の変化によりミズゴケが後退しミツガシワやヨシなど他の植物にとって替わられる可能性がある。本研究の結果は、ミズゴケが後退すれば湿地からのメタンの放出量が加速される可能性があることを示している。
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