研究概要 |
1.赤潮ブレベトキシンAは,5〜9員環を含む10個(A〜J環)の環上エーテルが梯子状に連なったポリエーテル系化合物である。この複雑で巨大な天然物は,8および9員環が連続しているため合成が非常に困難であり,未だに全合成が達成されておらず,有機合成化学者にとって非常にチャレンジングなターゲットである。私はこれまで,同様なポリエーテル化合物であるシガトキシン(シガテラ中毒の原因毒)の全合成研究の過程で,新規な環拡大反応による中員環エーテルの効率的な構築法の開発に成功している。そこで,この手法をブレベトキシンAの合成に応用する事を目的として研究を行った。 2.環化反応を利用して中員環エーテル合成することは一般に困難であるため,私は環拡大反応を徹底的に利用する独自の方法論を開発し,共通の合成中間体からそれぞれ7, 8, 9員環エーテルを合成することに成功した。また,これらのメソ体を,酵素反応を利用した不斉アセチル化により非常に高い選択性で光学活性体に誘導することにも成功した(発表済)。また,ブレベトキシンAのBCDE環部分とシガトキシンのIHGF環部分が非常に類似しているため,シガトキシンの合成手法をそのままブレベトキシンAに応用する事にした。即ち,8員環エーテル(B環部)を出発原料とし,当研究室で開発した,パラジウム触媒を用いる光立体選択的環化反応を利用してC環部モデルの構築に成功した(投稿準備中)。次に,E環部(9員環エーテル)とのカップリング反応を検討するため,まずモデル実験として6員環を用い,ケタール化法により2つのフラグメントを連結した。更にオレフィンメタセシス反応を利用して閉環し,7員環(D環部)を構築することに成功した(投稿準備中)。
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