研究概要 |
1.テトラフェニルセレノフェンのジメチルジオキシラン酸化によりセレノフェン1,1-ジオキシドの合成にはじめて成功した.この合成法は各種セレノフェンに対しても有効であり,テトラp-トリル,テトラp-アニシル,テトラp-クロロフェニル,テトラ2-チエニル,2,5-ジメチル-3,4-ジフェニル,およびベンゾセレノフェン1,1-ジオキシドの合成にそれぞれ成功した. 2.セレノフェン1,1-ジオキシドの熱分解.テトラフェニルセレノフェン1,1-ジオキシドを酸素存在下,トルエン中1時間加熱環流したところ,二酸化セレン,セレン末とともに,対応するフランを85%,cis-およびtrans-ジベンゾイル-1,2-ジフェニルエチレンをそれぞれ14%,2%の収率で生成することを明らかにした.また,ラジカル補足剤として働く2,3-ジメチルブタジエンと酸素存在下,トルエン中加熱環流を長時間行っても熱分解反応が進行しないことを見いだした.不活性ガス雰囲気下では熱分解の進行はきわめて遅く,本反応の進行にラジカル等の化学種が重要であることがわかった.以上の傾向が,各種セレノフェン1,1-ジオキシドについても見られることもわかった.次に固相での熱分解を検討した.分解生成物は生成比こそ異なるが溶液中と同じであり,分解反応を進行させるには溶液中よりもはるかに高温が必要であることがわかった. 3.セレノフェンとチオフェンの競争的酸化反応.テトラフェニルセレノフェンとチオフェンの同量を1等量のジメチルジオキシランで酸化したところ,酸化生成物としてセレノフェン1,1-ジオキシドのみが得られた.このことよりセレノフェンがチオフェンに比して酸化活性に優れていることがわかった.
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