本研究では、申請者らの作製した高温NMRプローブを用いて、高温下で溶融状態になるケイ酸塩融体について多核のNMR測定を行い、それぞれの構成イオン種の配位環境を明らかにすることを目的とした。 これまでの研究の引き続きとして、ケイ酸塩融体の^<23>Na測定により、ケイ酸塩融体中でのナトリウムの微視的な配位環境が温度、組成などに依らずほぼ7配位であるという結論を得た。(Physics and Chemistry of Minerals印刷中) また、^<29>Si NMR測定により、ケイ酸塩融体中に存在する微視的な構造単位の同定を行い、またそれらの間の平衡反応の温度変化を決定した。温度を上げることにより平衡反応はより不均質に構造単位が分布する方向にずれることを確認した。また温度係数から平衡反応のエンタルピーを得た。(Geochimica et Cosmochimica Acta印刷中) 一方、ケイ酸塩融体中での水分子、水素原子の挙動を見るために、高温下^1H NMR測定を行った。水和ガラス試料を加熱することにより水分子の拡散、脱離挙動を追跡し、水分子からシラノール基(Si-OH)への変化を直接観測し、その定量に成功した。また融体中に極微量に残存する水分子からの^1H NMR信号を世界で初めて観測することに成功した。融体中の水分子はSi-OHの形で残存し、そのときの^1H化学シフト値は融体の組成に敏感で、融体の酸-塩基性に対応して広い範囲にまたがることを明らかにした。また、このことは新しい酸-塩基性の尺度となりうることが示唆できた。(投稿準備中)
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