研究概要 |
1.ジシラニル鉄錯体Cp^1Fe (CO)_2SiMe_2SiMe_3(Cp^1=η-C_5H_5, η-C_5Me_5)をHMPAなどの塩基存在下で光照射したところ,塩基がシリレン配位子に配位して安定化されたシリル(シリレン)鉄錯体がほぼ定量的に得られることを見いだした。またこの反応をルテニウム錯体にも応用し,シリル(シリレン)ルテニウム錯体を得ることにも成功した。 2.得られたシリル(シリレン)錯体の温度可変NMRを測定したところ,メチル基がシリル基からシリレン配位子へNMRタイムスケールで分子内1, 3転位していることが明らかになった。これはシリル(シリレン)錯体でアルキル基のスクランブリングが起こっていることを直接観測することに成功した初めての例である。またシリレン配位子に配位している塩基と遊離の塩基とが交換していることも明らかになった。 3.シリル(シリレン)錯体とメタノールとを反応させると,メトキシシリル(シリル)(ヒドリド)錯体が生成した。またシリル(シリレン)錯体にメチルリチウムを反応させると,陰イオン性のビス(シリル)錯体が生成した。これらの事実からシリレン配位子が電子不足になっていることが明らかになった。 4.シリレン配位子に対する塩基の配位力を比較した結果,強い方からジメチルアミノピリジン,N-メチルイミダゾール,HMPA, N, N'-ジメチルイミダゾリジノンの順番になった。 5.これらの成果を踏まえて,アルキル基の1, 3転位はR_nE-M=E^1R^1_m(E, E'=典型元素,M=金属)型構造を持つ化合物一般に見られるのではないかという考えを提案した。
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