研究概要 |
アセトン溶液のスローエバポレーションによって得られた2, 4-hexadiynediol bis (p-toluenesulphonate(以下PTS)を熱重合することによって作成したpoly-PTSを基盤として、いくつかの有機化合物の溶融状態からのエピタキシャル成長を行い、これまで蒸着などに用いられてきた基盤と比較し、そのメカニズムを検討した。 小型のヒ-ティングステージを組み込んだ反射型偏光顕微鏡により、エピタキシャル成長の過程をその場観察した結果、PTSモノマーの成長の場合、既存の基盤(KCl単結晶へき開面、ラビングポリイミド膜、グラフォエピタキシャル成長用基盤)の場合まったく方位制御が見られないのに対し、poly-PTS基盤では著しい方位制御が観測され、20分程度でミリメートル程度の薄膜単結晶が得られた。また、アフラミの理論に従った解析の結果、核生成は不均一機構であり、基盤により制御されていることが明らかとなった。 成長したPTS薄膜単結晶のX線回折を観察した結果、得られた結晶の方位はpoly-PTS基盤とb, c軸を一致させて成長しており核生成だけではなく、成長方位も制御されていることが明らかとなった。 また、他の化合物4BCMU, 3BCMUにおいても同様の制御が観察された。 以上の結果より、核生成、結晶成長の制御は、基盤の幾何学的な構造に因るばかりでなく、基盤を構成する分子と成長する分子との化学的相互作用が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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