申請者らは、最近、非晶質のモリブデン酸アルカリ塩の一種が光エネルギーにより結晶化することを見い出した。この現象は太陽光程度の光で起こり、現象的に非常におもしろい。この現象のメカニズムや現象の起こる構造を明らかにすることにより、光反応などに寄与できる新たな化合物の創製などに応用できる可能性がある。本研究では、フォトクリスタリゼーションに有効な構造上の特徴を明らかにすることとフォトクリスタリゼーションに適した非晶質試料の合成を行うことを目的とした。 フォトクリスタリゼーションを起こすことがわかっている非晶質試料の構造をXANES(X線吸収端微細構造)スペクトルの測定などにより調べたところ、その骨格はオルトモリブデン酸塩などに見られるMoO4四面体構造からなるのではなく、三酸化モリブデンなどにみられるMoO8八面体構造からなることがわかった。また、その非晶質試料がフォトクリスタリゼーションを起こす条件を詳細に調べたところ、混合原子価状態をもつ化合物との共存がフォトクリスタリゼーションに非常に有効であることがわかった。これらの知見に基づいて、フォトクリスタリゼーションに適すると考えられる新たな非晶質試料の合成の検討も行い、フォトクリスタリゼーションを起こす非晶質試料と同様の構造をもち、しかも、それ自体が混合原子価状態をとる非晶質試料の合成にも成功した。 このフォトクリスタリゼーションのメカニズムを明らかにするには平成9年度科学研究費補助金の申請書に示したような光の吸収に関する定量的な議論を行う研究が必要である。
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