非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij35)の0.1mol dm^<-3>水溶液中において、非イオン性配位子の18-クラウン-6(18C6)及びジシクロヘキシル-18-クラウン-6(dc-18C6)とアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンとの錯形成の熱力学的パラメーターをカロリメトリーにより決定した。その際、対イオンの効果についても検討するため、塩化物イオンと過塩素酸イオンをそれぞれ対イオンとし、支持電解質として塩化テトラエチルアンモニウムと過塩素酸テトラエチルアンモニウムを用いた測定を行った。塩化物イオンを対イオンとした際の18C6のBrij35ミセル溶液中における錯形成の熱力学的パラメーターは水溶液中における値とほぼ同じ値となり、これは対イオンである塩化物イオンの強い水和のため18-クラウン-6錯体がミセル中へほとんど分配しないためと考えられる。これに対し、過塩素酸イオンを対イオンとした場合にはミセル溶液中と水溶液中でカロリメトリーにより測定された熱量が異なり、これは18-クラウン-6錯体のミセル中への分配を考慮することにより説明できた。過塩素酸イオンは塩化物イオンより水との相互作用が弱いため、過塩素酸イオンを対イオンとした場合に18C6錯体のミセルへの分配が増大したと考えられる。dc-18C6は水に難溶であるが、0.1mol dm^<-3>のBrij35水溶液には0.05mol dm^<-3>以上の濃度に溶解することが分かった。これは、dc-18C6がミセル中に取り込まれることにより可溶化したためと考えられ、dc-18C6はミセル水溶液中においてそのほとんどがミセル中に取り込まれていると考えられる。また、dc-18C6とアルカリ金属イオンとのBrij35ミセル溶液中における錯形成の熱力学的パラメーターを決定し、水溶液中における18C6錯体の生成と比較することによりミセルが錯形成に及ぼす効果を検討した。
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