研究概要 |
生物界には,特定の元素を濃集する生物濃縮現象が見られる。本研究では,海藻中の微量元素の定量を試み,金属のみならず,非金属の濃縮(ヨウ素/臭素)についても研究対象とした。 試料として,昨夏に,日本海側の新潟県近辺の海域(小針沖海岸/船江町海岸)から採取した4種類の海藻について,微量元素の定量を行い、海藻の種類と含有元素の存在量との関係を検討した。今回用いた海藻試料は,緑藻ホソジュズモ,アナアオサ,紅藻オゴノリ,タンバノリの4種である。採取した海藻は,凍結乾燥後,乳鉢で細粉化した。これを風乾後、濃硝酸/濃硫酸により湿式分解を行った。この試料溶液から,臭化物イオン(Br^-)については,溶媒抽出器を用いて分離し,イオンクロマトグラフィーにより定量を行った。ヨウ化物イオン(l^-)や十数種の金属イオンについては,誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)をにより定量を行った。As,Seの定量には,ICP発光分析のほか,水素化物発生-原子吸光分析計(HG-AAS)を用いて定量を行った。 臭化物イオン(Br^-)における,これらの海藻の濃縮係数は,0.59〜2.0となり,濃縮は見られなかった。ヨウ化物イオンについては,緑藻と紅藻による大きな差は見られなかったものの,いずれも,それぞれ(1〜3)×10^5と非常に大きい濃縮係数が見られた。主要な金属元素では,海水中の元素含有量に対して,Al,Cr,Mnで,10^4〜10^5,Fe,Pbで10^4程度,Cu,Znで10^3〜10^4,Co,Niで10^3程度の濃縮を示したのをはじめ,おおむね大きな濃縮係数が見られた。海藻間や緑藻と紅藻による大きな差は見られなかったが,AlやFeでは,緑藻の方が若干大きい濃縮が見られた。 さらに他種類にわたる系統的な海藻の化学分析は,環境化学,衛生学的見地から重要な意義を持つと考えられる。
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