研究概要 |
本研究では資源作物オオムギからの高親和性カリウム輸送系遺伝子の同定し,環境および植物体の組織による高親和性カリウム輸送系発現の調節を解明することを目指した。 酵母から数種、植物ではコムギから1種類報告されていた高親和性カウム輸送系遺伝子において認められた共通のアミノ酸配列部分に対応する20から30の塩基配列を人工合成した。上流プライマーとして5種類(TRK1、TRK3、TRK5、MH1、MH2)作成した。下流プライマーとして4種類(TRK2、TRK4、HR2、HR3)作成した。 高親和性カリウム輸送系は、カリウム欠乏条件で発現していると考えられている。そこで標準の培養液からカリウム塩を除いた条件で、2週間水耕栽培したオオムギ(品種赤神力)の根からRNAを抽出し、cDNAに変換した後、上記プライマーを上流、下流いろいろな組み合わせを使って高親和性カリウム輸送系遺伝子のPCRによる増幅を試みた。様々なPCR条件を検討したが結局いかなる組み合わせを用いてもPCR産物を得ることができなかった。名古屋大学のグループによると(未発表データ)、アラビドプシスにおいて、TRK1(5'-GGIAAYACIYTITTYCC-3')とTRK2(5'-VDIGGIARRTACATCAT-3')の組み合わせで、高親和性カリウム輸送系遺伝子を増幅することができたという。オオムギでは、このプライマーの組み合わせでもPCR産物は得ることができなかったので、アラビドプシスとは、遺伝子の塩基配列が多少異なるのかも知れない。あるいは、今回用いた栽培条件では高親和性カリウム輸送系が発現していなかったという可能性もあるので、現在栽培条件を変えて(0.25mMの硫酸カルシウムのみの培地)1週間育てたオオムギからRNAを抽出して、再度PCRをおこなっている。
|