本研究では、これまで全く明らかとされていなかったミカヅキモの有性生殖成立に極めて重要は役割を担うと思われる走化性物質について、その生理的特性を明らかにし、さらに単離精製を行い生化学的特性に関する知見を得ることにより、ミカヅキモの有性生殖時における細胞間コミュニケーションのさらなる一端を明らかにすることを目的としている。 1.走化性物質の生理特性の解析 走化性物質は、光の下で-型細胞から培地中に放出され、+型細胞に対して作用して、自身の存在する方向に誘引した。また、その作用自身にも光の存在が必要であった。さらに、極めて低い濃度まで希釈したときにも誘引作用を示すことが明らかとなった。 2.走化性物質の精製と生化学的特性の解析 走化性活性は、弱い熱処理で失活された。走化性活性を含む培地を回収後濃縮し、Sephacry1 S-100 HRを担体とするゲルろ過に添加したところ、活性が分子量10-20kの位置に溶出された。これらの事実から、走化性物質が恐らくタンパク質であろうことを推定した。 以上の事実から、ミカヅキモの有性生殖成立には、その-型細胞から分泌され+型細胞に対して誘引作用を示す、タンパク質性の性フェロモンが関わっていることが明かとなった。
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