研究概要 |
1)アブラツノザメのカルシトニンの純化は,タンパク質レベルと遺伝子レベルの両面から行った。まず,タンパク質レベルでは,アブラツノザメ300個体文の鰓後腺を集め,それより純化・精製を行ったが,鰓後腺に含まれるカルシトニンの含量が少なく,夾雑物が多く,純化することはできなかった。しかしながら,アブラツノザメのカルシトニンの生化学的な性状として,(1)分子量約3500である事,(2)カルシトニンのアミノ酸配列が決定されている同じ軟骨魚類のアカエイのカルシトニンと比較すると,疎水性はアカエイと似ているが,当電点はアカエイより低いと言う事が明らかになった。一方,遺伝子レベルでは,PCR法によるアブラツノザメのカルシトニン遺伝子を増幅しようと試みたのであるが,硬骨魚類のサケのカルシトニン遺伝子に基づいて設計されたプライマーでは,増幅しなかった。そこで,現在、アカエイの鰓後腺よりcDNAライブラリーを作成している。このcDNAライブラリーより,アカエイのカルシトニン遺伝子の配列が決定できれば,それに基づいてプライマーを設計し,PCR法によりアブラツノザメのカルシトニン遺伝子を増幅する予定である。 2)アブラツノザメのカルシトニンの生理作用は,その構造が決定されていないので,ラットバイオアッセイによりカルシトニンの低下Ca血活性は測定していない。しかしながら,実験材料として使用しやすい同じ軟骨魚類のアカエイを用いて,軟骨魚類のカルシトニンの生理作用を調べた。その結果,アカエイでは,胆汁経路でのCaの排出にカルシトニンが関与している事が明らかになった。一方,アカエイの鰓後腺において,エストロゲンのレセプターが存在し,カルシトニンが生殖生理と関係がある事も明らかになった。また,この成果は,次ページに掲載してある。
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