研究計画では造血因子依存性細胞に造血支持細胞との直接接触によって誘導される未知の遺伝子を見つけるまで遂行する予定であったが、平成9年3月現在の状況はサブトラクション後のクローンをスクリーニングしている段階で、未知の遺伝子の発見には至っていない。研究の遅延の原因には以下のようなものがあった。 1.サブトラクション後のcDNA増幅がうまくいかなかった。他社製品に比べて比較的安い耐熱性DNA合成酵素を汎用していたがうまく増幅できなかったため、Taq酵素への変更やその他のPCRコンディションを検討することにより、かなりの高分子のcDNAも増幅することが出来るようになった。 2.サブトラクテッドcDNAのライブラリー構築が困難であった。通常のラムダファージベクターの組み込みは、何回かチャレンジしたがうまくいかなかった。そこでTA cloningを試みたがインサート含むクローンが極端に少なかった。残念ながら理由の解明には至っていない。そこで方法を変え制限酵素処理/脱リン酸化したベクターにインサートを組み込む基本的な方法によってインサートを持つクローンを幾つか得ることができた。 3.実際の実験を遂行する上で幾つかの点の改良を試みた。 1)サブトラクション時に共培養後のDA-1由来のcDNAから更にMS-5由来のcDNAを引く操作をつけ加え、共培養後のDA-1に特異的なcDNAの割合を高めた。 2)サブトラクテッドクローンのノーザンハイブリダイゼーションによるスクリーニング操作を行い、大量クローンの処理に対応出来るようにした。 今後の計画 スクリーニング後ポジティブクローンを得たら、この遺伝子配列を決定し既知の遺伝子と同一であるかを検討すると共に、動物細胞発現ベクターにサブクローニングし、共培養前のDA-1細胞に組み込みその機能を調べる予定である。
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