研究概要 |
ウニ卵の受精膜は、卵内Ca^<2+>濃度の増加(Ca^<2+>シグナル)が引き金となって表層顆粒のエキソサイトーシスが起こることによって形成されることが知られている。しかし、Ca^<2+>シグナルが起生してから表層顆粒のエキソサイトーシスが起こるまでの系は明らかにされていない。ウニ卵単離表層の表層顆粒エキソサイトーシスはNAD^+で誘起され、単離表層の68Kタンパク質のADP-リボシル化が認められた。これを触媒するADP-リボシルトランスフェラーゼのKm(NAD^+)値は1.9mMで、単離卵表層の顆粒崩壊のKm(NAD^+)値とほぼ一致した。68Kタンパク質のADP-リボシル化を阻害するニコチンアミド(NA)や3-アミノベンツアミド(3-ABA)の濃度範囲は、Ca^<2+>やNAD^+による単離表層の顆粒崩壊を阻害するNAや3-ABAの濃度範囲と一致した。一方、ウニ未受精卵を精子やA23187、メリチンで活性化したとき、ホスホリパーゼA_2の阻害剤である4-ブロモフェナシルブロマイド(BPB)によって受精膜形成が阻害された。また、BPBは、単離卵表層に認められるホスホリパーゼA_2を阻害し、この阻害に必要なBPBの濃度範囲は、受精膜形成阻害に必要な濃度と一致した。さらに、BPBは、精子やA23187での卵の活性化にともなう卵内Ca^<2+>濃度上昇やホスホリラーゼa活性、タンパク質合成、アシドプロダクション、CN-感受性呼吸などの細胞機能活性化には影響を与えなかったが、CN-不感受性呼吸を阻害した。卵活性化時のホスホリパーゼA_2の活性化が、表層顆粒のエキソサイトーシスを引き起こして受精膜形成を誘起するとともに、CN-不感受性呼吸に利用される脂肪酸を生成すると考えられる(Develop.Growth Differ,in press)。現在、68Kタンパク質のADP-リボシル化とホスホリパーゼA_2活性化の関連を研究中である。
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