研究概要 |
グネツムパルヴィフォリウムの雌花序からRTPCR法を用いて、被子植物の花器官形成遺伝子であるMADS関連遺伝子を単離した。4種類のグネツムMADS関連遺伝子(Gne1,2,3,4)は、それぞれMADS boxとK boxを持つ、植物型のMADS遺伝子であった。Gne2は開始コドンが見つからず、転写されているが翻訳されていない偽遺伝子である可能性が高い。これまで報告されている植物MADS遺伝子とともに遺伝子系統樹を作成すると、Gne1は従来しられていたどのMADS遺伝子とも近縁でなく、グネツム特有の遺伝子であることがわかった。Gne4は被子植物では、植物体全体で発現している群と単系統になった。また、Gne3は被子植物では胚珠、花被形成に関与している遺伝子群と近縁であることがわかった。in situハイブリダイゼーションの結果、Gne3はcollarと呼ばれる組織に特異的に発現していることがわかった。グネツムと被子植物は、従来の分子系統学的な研究から、平行的に似た花形態を進化させてきたことが推定されていた。被子植物で花被形成に関与しているGne3遺伝子がグネツム類では、collarという別の器官形成に関与していることは、被子植物とグネツム類が平行的に進化したことを支持している。また、グネツムの球心を覆う3つの層では、どのMADS遺伝子の発現も見られなかった。被子植物では、球心を覆う球被でいくつかのMADS遺伝子の発現が見られる。このことは、グネツムの球心を取り巻く器官が被子植物とは異なる遺伝子系によって形成されている可能性を示唆している。今後、被子植物で球被形成に関与しているAP2遺伝子群、ホメオボックス遺伝子群をグネツム類で解析することにより、グネツムにおける被子植物的器官の起源が解明できる可能性がある。
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