半導体超格子、ならびに量子細線、量子井戸箱などの半導体ナノ構造が示す特異な物性を電子デバイスや光デバイスに応用していくためには、ヘテロ界面での原子配列制御が重要なポイントであり、量子サイズデバイスの実現には良質な結晶性と原子レベルでの制御性を兼ね備えたプロセス技術の開発が必要である。本研究では、II-VI族化合物半導体のヘテロ成長過程を明らかにすることにより、自己組織化を利用した量子サイズデバイスの作製技術を確立することを目的として研究を進めた。 有機金属気相成長法によるZnSe/GaAsおよびZnSe/MgSヘテロ成長過程を、原子間力顕微鏡、高分解能X線回折測定と光学測定により明らかにした。トリスジメチルアミノヒ素を用いてGaAs表面を熱処理することにより原子レベルで平坦な表面を得ることができ、GaAs表面の原子種の制御が成長したZnSe膜の結晶性と光学特性に強く依存することを示した。界面原子種の制御により、ZnSe/GaAs界面ではZn-Asボンド、ZnSe/MgS界面ではZn-Sボンドを形成することにより良質な膜の成長が可能であることを明らかにした。 有機金属分子線成長法を用いてZnSe/GaAs表面上にCdSe量子箱の作製を行った。1.5〜4分子層CdSeを堆積した表面では、直径68nm、高さ17nm程度の均一なサイズのドットが形成され、自己組織化によるCdSe量子箱の形成が可能であることを確認した。ドット密度はCdSe堆積量の増加に伴い1.2×10^9cm^<-2>まで増加するが、5分子層堆積するとドットのコアレッセンスが生じて(311)Aファセットを持つ3次元島が形成され、CdSe/ZnSeヘテロ成長初期過程がわかった。
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