研究概要 |
本研究では、低誘電率の有機半導体薄膜と高誘電率の無機半導体薄膜を組み合わせた有機電子輸送層/無機共振器型発光層/有機正孔輸送層からなる有機/無機ヘテロ構造電界発光素子の構築法の確立、キャリヤ集約による高効率発光の実現、共振器導入による発光特性制御に関する知見を得ることを目的として研究を進めた。その結果、以下の研究成果を得た。 1,無機発光材料の探索および薄膜化プロセスの確立 有機半導体薄膜との積層構造が作製可能な無機発光薄膜材料として、層状ペロブスカイト蒸着薄膜およびユーロピウム錯体LB膜を見い出し、その薄膜作製法を確立した。 2,有機半導体/無機半導体ヘテロ構造電界発光素子の発光特性 層状ヘロブスカイト薄膜を発光層とした素子では、有機半導体薄膜との積層構造とすることで、発光層にキャリヤを集約することができ、効率約3%、最高輝度4000cdm^<-2>以上の高効率高輝度発光が得られることを見い出した。ユウロピウム錯体LB膜を発光層とした場合には、効率0.01%最高輝度約3cdm^<-2>であった。 3,無機発光層への共振器構造の導入 層状ヘロブスカイト蒸着膜の場合、蒸着膜厚の制御により導波路型の、マスキングにより円形ディスク型の共振器構造を導入できることが示された。ユウロピウム錯体LB膜の場合には、2成分混合系における相分離を利用した共振器構造の導入を試みたが、相分離構造の制御が困難であり、共振器構造の導入はできなかった。 以上のように本研究において、無機発光材料と有機半導体とを組み合わせることで発光層に共振器構造を導入した電界発光素子を構築することができることを明らかにした。また、共振器構造導入による発光特性制御に関する詳細な知見を得ることが今後の重要な課題として残された。
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